FAQ
よくいただくご質問とご質問への回答をまとめました。お問い合わせはこちらまで。より詳しく回答します。
2022年5月11日更新
1.受託分析全般
Q. いくつくらいのタンパク質を同定することができるのか?
A. 当社ではLC-MS/MSを中心とした分析プラットフォームを構築しています。この分析系を用いた場合、たとえば培養細胞から最大6000種類のタンパク質を同定することができます。ただし、同定数は測定試料の状態にも依存しますので、最初は少数試料を用いた事前検討をお勧めします。
Q. 納期はどのくらい?
A. 解析結果のご提示まで1か月程度を目安にお考えください。ただし、試料の数、分析の混み具合や試料調製の難しさによってはお時間をいただくことがあります。
Q. 費用はどのくらい? (2019年1月15日更新)
A. ご依頼の内容によって変動幅が大きいので、ご要望や試料の状態などを詳しく伺ったうえで個別に費用計算しております。一度ご相談ください。
Q. 納品物は?
A. 分析報告書と解析データをセットにしてお出しします。そのほかにも依頼者のご要望に応じて再解析もおこないます。分析報告書の内容は業界最高レベルだと自負しています。
Q. 解析データの内容は?
A. ペプチドとタンパク質の各レベルでそれぞれ表計算ファイルにまとめます。おもに次の情報が含まれます。同定されたタンパク質の名前、ペプチドのアミノ酸配列、翻訳後修飾の種類と修飾アミノ酸残基、各試料から得られた検出強度、試料間の検出強度比。
Q. リン酸化のほかにも翻訳後修飾の解析はできるのか?
A. リン酸化のニーズがいちばん高いので、このサービスを前面に出しています。ほかにも酸化やユビキチン化などの実施例がありますのでご相談ください。
Q. 動物以外でも分析できるか?
A. はい。植物、酵母などの真核生物から細菌やウイルスまで対象にしています。試料の種類や性質に応じて最適の分析方法を提案します。
Q. 臨床試料の受け入れは可能か?
A. はい可能です。当社ではP2レベルの実験施設を運用しています。ただし、おもな病原菌の検査はご依頼者の方で実施していただく必要があります。
Q. 海外のメーカーだと同じようなサービスがもっと安価で提供されているが
A. 直接比較はできませんが、当社のサービスでは最新の質量分析システムを用いて高い検出感度の測定を実現しています。試料容器にも吸着の少ないものを選んで最適な試料調製手順を確立しています。さらに、この分野で経験の豊富な研究者(日本人)が、事前の詳細なお打ち合わせを経て最良の分析手順を提案します。高品質の分析サービスだと自負しています。
Q. 以前にプロテオミクスをやってみたが思ったような結果が得られなかった
A. 最近10年間でこの分野の技術は急速に進展しました。たとえば、分析当たりのリン酸化部位の同定数は少なくとも二ケタは増加しています。また、同定の信頼性を確保するために統計的な解析方法が導入されるようになり、大量のデータを客観的に評価する手順が確立しています。新しい試料調製法の開発や質量分析計の性能の向上が全体の進歩に貢献しています。
Q. とても難しい分析を依頼しようとしているのだが、成功の保証はあるか? (2019年1月15日更新)
A. 少数試料を用いた検討試験を提案しています。この結果を見ていただいたうえで、本番分析への移行の可否を判断していただきます。
2. ノンラベル法とラベル法
Q. ノンラベル法とは?
A. 非標識法とも呼ばれます。各試料からそれぞれ得られたLC-MS/MSデータを、専用のソフトウェアを用いて計量的に比較します。LC-MS/MSの安定的な運用と再現性の高い測定データがノンラベル法を信頼性の高いものにしています。測定試料を安定同位体原子で標識する方法(ラベル法あるいは標識法)の方が早くから実用化されたため、対比する意味でこの名があります。
Q. ノンラベル法の利点は?
A. 多くの利点があります。① ラベル化の工程がないので安価で実施することができ、かつ試料調製の手順が単純です。② LC-MS/MSで検出されるペプチド由来の検出ピークを全て比較解析に供することができます。③ より少量の出発試料で分析結果を得ることができます。④ 比較に供する試料の数に制限がないので、とくに多数検体の統計解析が必要な臨床研究に適しています。
Q. ノンラベル法のデータの信頼性は?
A. 培養細胞のSILAC法やiTRAQ法に比べると、検出強度比較の正確さは劣ります。同じ仕様の質量分析システムを使う限りは同定の信頼性に差はありません。
Q. 複数回の測定は必要か? (Analytical replicate)
A. 探索的な分析の場合は、1回分の測定であってもある程度以上の検出強度(差)のピークに関しては充分信頼できるデータが取得できています。3回以上測定すると統計的な解析が可能です。ご研究の目的とご予算のことも伺いながら相談させてください。
Q. 複数の同一試料を用意する必要があるか? (Biological replicate) (2019年1月15日更新)
A. 上記と同様に、単一試料の測定であっても充分ですが、3連以上の試料をご用意いただけるとより信頼性の高い計量データになります。
Q. ノンラベル法とラベル法どちらを選択するべきなのか?
A. 分析の目的に依存します。たとえば、倍数値(Fold change)の1.5や2に意味を持たせるような研究の場合はラベル法を選択するべきです。ノンラベル法は、よりはっきりした差異をスクリーニングする目的で用いられます。ノックダウン遺伝子の標的分子の探索、相互作用分子の同定やバイオマーカー研究など、多くの分析例があります。
Q. ラベル法を用いた比較解析も可能か?
A. TMT法などを実施することができます。ご相談ください。
3. 試料調製など
Q. 分析可能な試料の量は? 培養細胞の場合 (2019年1月15日更新)
A. プロテオームレベルの比較分析の場合、培養細胞ですと12の6乗個を標準にしています。ご用意が難しい場合はご相談ください。
Q. 分析可能な試料の量は? 動物組織の場合
A. 湿重量にして数ミリグラム程度ご用意いただけると助かります。
Q. 分析可能な試料の量は? ホルマリン固定パラフィン包埋 (FFPE) 組織切片の場合
A. 厚さ10マイクロメートル、切除面積合計8ミリ平方メートルを基準にしています。
Q. リン酸化プロテオミクスの場合の試料調製は?
A. ペプチド断片の混合物からリン酸基の付いたペプチドを選択的に回収します。回収にはチタニア担体による金属アフィニティークロマトグラフィーを採用しています。
Q. 試料調製に界面活性剤を使いたいが、制限はあるか? (2019年1月15日更新)
A. SDSなどの界面活性剤は、LCにおけるペプチドの分離展開と、質量分析に導入する際のペプチドの気化の双方に悪影響を及ぼします。ただし、界面活性剤の種類によっては当社で除去の手順を確立していますので、調製の前に一度ご相談ください。SDSを含む場合でも、SDS PAGEの短距離展開によってプロテオーム計量比較をおこなっています(実績多数)。
Q. 血漿と血清のどちらを準備すればよいか?
A. 特別な理由のない限り血漿を勧めています。血清の場合、血液凝固反応の間にタンパク質の組成が変動することがあり、凝固に要する時間も検体間でばらつきがあります。血漿分離に用いる抗凝固剤は、EDTAやヘパリンなど一般的なもので問題ありません。なお、プロテオミクス専用の採血管も入手できますのでご相談ください。
Q. 血漿プロテオミクスの試料調製は?
A. 抗体カラムを用いて高濃度タンパク質12種類~14種類の除去処理を実施します。
Q. 銀染色バンドのタンパク質を同定してほしい
A. 染色には質量分析専用の試薬キットをお使いください。また、現像時間は取扱説明書に記載されている上限を超えないようにしてください。長時間の現像によってペプチド断片の回収量が減少することがあります。染色後、分析対象のバンドをご依頼者のもとで切り出していただくか、あるいはゲルごとプラスチックバッグに入れて冷蔵便で当社までお送りください。
Q. トリプシン以外の加水分解酵素も選ぶことができるか?
A. はい。リジルエンドプロテアーゼ(Lys-C)やV8プロテアーゼなど、基質特異性の異なる酵素でも処理することができます。
4. 質量分析の基礎知識
Q. 測定に用いる質量分析計を選ぶことができるか?
A. はい。通常はリニアイオントラップ型の装置かOrbitrap質量分析計を使っていますが、ご要望に応じてQqTOF型やトリプル四重極型による測定も行っています。
Q. MS/MS(エムエス・エムエス)ってなに?
A. タンデム質量分析のことです。装置内で2回質量分析をおこなう技法にこの名があてられます。最初のMSでペプチド分子の質量を測ります。つづく2回目のMSでは、目標のペプチドを装置内で壊して生じた分解イオンの質量を測定します。後者の測定データからペプチドの構造情報が得られます。
Q. MS/MSの良いところは?
A. 測定データからペプチドの構造情報が得られるので、タンパク質の同定結果の信頼性が高くなります。また、修飾基の種類と修飾されているアミノ酸残基もわかります。
Q. LC-MS/MSとは?
A. MS/MS に液体クロマトグラフィー(LC)をつなげたのがLC-MS/MSです。ショットガン分析はLC-MS/MSで行います。ペプチドをLCで分離溶出された順にMS/MSにかけると、混合物のままいっぺんに測定するよりも出力データの規模が比較にならないほど大きくなります。
Q. LC-MS/MSの優れた点は?
A. 取得された大規模データから数千種類のタンパク質が同定されるので、比較解析の網羅性が高くなります。なお、ペプチドの質量とLC溶出時間を2軸にして二次元電気泳動のように複数試料のプロテオームを比較することができます。これは当社の解析技術のひとつでもあります。
Q. MALDI-TOF MSとLC-MS/MSの違いは?
A. MALDI-TOF MSでは通常はペプチドの質量のみを測ります。LC-MS/MSに比べて簡単にデータを取得することができます。初期のプロテオミクスではこの技法が主流を占めていました。現在でも用いられていますが、同定の信頼性はMS/MSに劣ります。また、検出の定量性が低いので、LCを接続したとしてもノンラベル比較解析には向きません。
5. 質量分析データの解析
Q. タンパク質の同定はどうやるの?
A. MS/MSデータはペプチドのアミノ酸配列の情報を含んでいます。このデータを、公開されているアミノ酸配列データベースと照合してタンパク質を同定します。MS/MSデータと配列データベースの照合には、マトリックスサイエンス社のMascot®ソフトウエアを用いています (
http://www.matrixscience.com/)。
Q. ペプチド/タンパク質の同定基準は?
A. 通常はFalse Discovery Rate (FDR) を基準にしています。Mascotソフトウエア上で1%または5%に設定します。
Q. 統計解析はどうやるの?
A. 階層クラスタリングや主成分分析などの手法を用意しています(2022年5月11日更新)。
Q. プロテオミクスデータを使ってネットワーク解析をやってみたいのだが?
A. 当社では直接承っていないのですが、信頼できる専門の会社をご紹介します。
6. ゲル上に分離展開されたタンパク質バンドやスポットの同定
Q. タンパク質染色にはどんなものを使っても良い?
A. 銀染色の場合は質量分析用の試薬キットを使ってください(例:「銀染色MSキットワコー」、富士フィルム和光純薬)。肉眼で染まっていることが確認されれば同定できる可能性が高いです。ただし、現像時間は取扱説明書に記載されている上限を超えないようにしてください。長時間の現像によってペプチド断片の回収量が減少することがあります。色素染色であればCBBが望ましいです。
Q. 染まりが薄いタンパク質バンド(スポット)の場合は、同じバンドを複数個集めて1回の試料調製に供するのか?
A. いいえ。肉眼で染まっていることが確認されれば1バンドでも同定できる可能性が高いです。ご相談ください。
Q. ウエスタンブロットで検出されたメンブレン上のバンド(スポット)を同定したいのだが。
A. タンパク質の同定はゲル上で銀や色素で染色されたバンドを切り取って行います。なお、ウエスタンブロットと同じ試料をゲル上で染色すると、バックグランドにたくさんのバンドが検出されて目的のタンパク質がわからなくなることが多いです。この場合は、免疫沈降などによる精製処理が必要です。
Q. 電気泳動のバンド(スポット)はどのような状態で梱包すればよいか?
A. 目的のタンパク質バンドをカッターで切り抜き、バンドごとに1.5-mlマイクロチューブなどの小容器に入れてください。また、切り取らずにゲルをそのままプラスチックバックなどに密封して冷蔵でお送りくださってもけっこうです。
7. その他
Q. 論文執筆やデータ登録のサポートはあるか? (2019年1月15日更新)
A. 当社の研究論文も含めて、比較的近い内容の論文をご紹介することができます。執筆までご希望の場合はご相談ください。また、当社からお出しした質量分析データの場合は、jPOSTをはじめとするレポジトリへ登録も無償でお受けいたします
Q. とてもマイナーな生物のタンパク質を同定したいのだが。
A. 同定の工程ではアミノ酸配列の情報が必要です。したがいまして、ゲノム配列分析が済んでいる生物であればなんとかなります。また、近縁の生物種の配列データベースを使ってうまくいったこともあります。配列情報がまったくなければ、MS/MSデータからペプチドのアミノ酸配列を直接読み取る必要があります。おもしろそうなので一度ご相談ください。