タンパク質バンド/スポットの同定
メディカル・プロテオスコープのプロテオーム受託分析
SDS-PAGEで現れた興味深いバンドや免疫沈降法で精製した複合体試料をはじめとして、日々の研究はタンパク質の同定が必要な場面に事欠きません。当社のサービスでは、ナノグラム(低フェムトモル)レベルの微量タンパク質でも迅速かつ確実に同定結果を返します。
分析の手順
当社では、揮発性の溶媒を用いた方法(Shevchenkoら、1996年)をもとにして、ゲル内プロテアーゼ加水分解からタンパク質同定までの手順を最適化しています。手順の概略は次の通りです。
① ポリアクリルアミドゲル上で可視化されたタンパク質バンドやスポットを、かみそりなどを用いてゲルごと切り出します。
② 切り出したゲル片を約1 mm角のサイコロ状の細片にします。
③ 細片をまとめて水及びアセトニトリルで洗浄した後、ジチオトレイトール (DTT) およびヨードアセトアミドによるアルキル化処理に供します。
④ 最後にトリプシンを加え、37℃で16時間保温して加水分解反応を行います。
⑤ 反応後、25 mM 重炭酸アンモニウム、5%ギ酸、およびアセトニトリルを用いてゲル片からペプチド断片を抽出します。
⑥ 抽出溶液を減圧下で乾燥します。
このあとは、LC-MS/MS、およびペプチドMS/MSデータの配列データベース検索を経てタンパク質を同定します。データベース検索にはマトリックスサイエンス社のMascot®最新版を用います。
分析例
下の例では、ユビキチン化EGFRに特異的に結合するタンパク質をプルダウン試料から同定しました。その際に、対照の試料 (EGF-) から切り出したゲル片も同時に分析し、バックグランド由来のタンパク質同定を同定一覧の上で差し引くことができました。
図.ユビキチン化EGFR結合タンパク質の同定
Kuroda S et al, Kitasato Med J (2012) より。銀染色バンドからHUWE1を
含む新規結合タンパク質を同定しました(EGFR: 上皮成長因子受容体)。
分析の対象
・染色ゲルから切り出したゲル片: 銀染色、CBB染色のほかに、各種蛍光色素で検出されたバンドも多くの場合同定できます。また、二次元ゲル上のタンパク質スポットも分析可能です。
おもに使用する分析機器と解析ソフトウェア
質量分析計
Q ExactiveTM 四重極-Orbitrap質量分析計(サーモフィッシャーサイエンティフィック)
液体クロマトグラフ
Ultimate 3000 RSLCnanoシステム(サーモフィッシャーサイエンティフィック)
配列データベース検索
Mascot® Server ver. 2.8(マトリックスサイエンス)
同定結果の整理と比較
Proteome DiscovererTM ver. 3.0(サーモフィッシャーサイエンティフィック)
おもな納品物
分析報告書: 試料調製からデータ解析までの各工程を詳述します。分析結果への簡単な考察も加えます。
タンパク質/ペプチドの同定結果: 表計算ファイルにまとめたものを添付します。
分析報告書の例はこちらです(必見)。
分析の成功のために
・事前に染色済ゲルの画像データをご開示ください。分析の可否を判断するだけでなく、より成功率の高い別の分析手順を提案できる可能性がありますので。
・銀染色の場合は質量分析専用のキットをお使いください。また、現像時間は各キットの取り扱い説明書に記載されている上限を超えないようにしてください。ペプチド断片の回収率が低下することがあります。
・対照試料のご用意をお勧めします。同定一覧に含まれる複数のタンパク質同定情報から、バックグランドや試料汚染に由来する同定を差し引くことができます。
・単一のタンパク質しかふくまないバンドに見えても、10種類以上のタンパク質が候補として挙がることがあります。この場合は、各タンパク質に帰属したユニークペプチド断片の数などを参照しながらタンパク質同定を順位付けします。こうしておくと、バンドに含まれる主要なタンパク質、すなわち染色の本体を絞り込むことができます。
・各バンドを切り出してそれぞれ同定するよりも、溶液試料のまま一斉に分析するほうが効率の良いことがあります。事前にご相談ください。
・タンパク質量以外のなんらかの理由で同定結果が得られないことがあります。この場合は、充分なお打ち合わせのあとに無償で分析をお引き受けします(1回のみ)。
・他社に依頼してうまくいかなかった試料についてもぜひご相談ください。むずかしい分析は大歓迎です。
2024年1月22日更新
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