LMDによる組織切片の回収
お知らせ
2020年3月末日をもちまして、レーザーマイクロダイセクション (LMD) およびLMD回収試料の分析のサービスを終了いたします。
レーザーマイクロダイセクション (Laser microdissection: LMD) は、組織薄切切片の顕微鏡観察で認められる目的細胞群をレーザー照射で切り出し回収する方法です。FFPE(注)組織ブロックの薄切切片からLMDを経て質量分析に至る一連の工程は、プロテオミクスの常法として確立しています。
ほとんどの生体組織は均一な細胞集団から構成されるわけではなく、例えば腫瘍組織は腫瘍細胞のほかにも正常細胞、炎症細胞や間質成分など様々な種類の細胞・細胞間質を含んだ不均質な集合体です。従来はこのような検体をまとめて破砕していたため、腫瘍由来の正確なプロテオーム情報を取得することが困難でした。LMDは、病変組織解析をはじめとする様々な場面で、生化学・分子生物学的な知見を得るための試料回収の手段として必要不可欠なものとなっています。
MPSはFFPE組織から調製した薄切切片の分析を承っています。
(注)Formalin-Fixed, Paraffin-Embedded(ホルマリン固定・パラフィン包埋)
LMDの原理
スライドガラス上に貼付した組織切片の形態学的・病理学的特徴を顕微鏡下で観察しながら、目的の領域や細胞にUVレーザーを照射して採取します。顕微鏡観察とレーザー照射の機能を備えた装置を使用します。
分析の手順
① FFPE組織ブロックから薄切切片を作成し、これをスライドガラス上に貼付します。
② 薄切切片に脱パラフィン処理を施します。
③ ヘマトキシリンで染色します。
(上記①~③の工程はご依頼者のもとで実施していただきます。)
④ LMDによって目的領域を回収します。
⑤ 回収した細片からタンパク質を抽出します。
⑥ タンパク質の混合物をプロテアーゼで加水分解します。
⑦ 加水分解で生じたペプチド混合物をLC-MS/MSに供します(非標識LC-MS/MS)。
⑧ タンパク質の同定・計量情報と報告書を納品します。
分析の対象
・FFPE組織検体
おもに使用する分析機器と解析ソフトウェア
LMDシステム
LMD7000(ライカマイクロシステムズ)
分析の成功のために
・FFPE組織の薄切から染色までの工程は分析依頼者の方で実施していただきます。通常の顕微鏡観察の場合の手順とは異なる点がありますので、ご相談の際に説明させてください。
・染色画像をご依頼者と共有した上で回収領域を決めます。
・1回の分析当たり必要な回収領域を8 mm2に設定しています。ただし、これより少ない量でも充分な結果が得られることが多いです。
・臨床検体の場合は、分析のご依頼に当たって下記の事項を遵守いただくようお願いいたします。
– 所属機関の倫理審査委員会で分析の承認を得てください。
– 機関外への検体の供出の許可を得てください。
2020年2月1日更新
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