非標識(ラベルフリー)プロテオミクス
メディカル・プロテオスコープのプロテオーム受託分析
プロテオミクスの第一歩は、対象の生物系に含まれているタンパク質群の発現量や翻訳後修飾の変動を計測することです。この網羅的な分析を効率よく進めるため、メディカル・プロテオスコープでは、液体クロマトグラフィー (Liquid chromatography, LC) とタンデム質量分析 (Tandem mass spectrometry, MS/MS) を連結した質量分析システム (LC-MS/MS) を最適化しています。一度の分析で3000種類を超えるタンパク質の同定・計量結果を出力することができます。
LC-MS/MSを用いたプロテオーム間の計量比較
ショットガンLC-MS/MSによって、イオン化したペプチド分子の質量スペクトルと、各ペプチドの開裂で生じたイオン(生成イオン)の質量スペクトルがともに大量に得られます(図1)。前者で観測されたピークの検出強度は当該ペプチドの含有量を反映しています。後者の生成イオンスペクトルはペプチドのアミノ酸配列の情報を含んでおり、このデータから配列データベース検索によるペプチド/タンパク質の同定へと進みます。
図1では、データ依存的取得法 (Data-dependent acquisition, DDA) によるLC-MS/MSの概略を示します。
図1.LC-MS/MSによる網羅的な測定
非標識 (Label-free) LC-MS/MSの原理
各試料から個別にLC-MS/MS測定データを取得します。各測定データに含まれる、ペプチド断片のイオン検出情報を試料間で対応付け、これをもとにして各ペプチドの同定情報と計量値を統合します(図2)。
図2.非標識 (Label-free) LC-MS/MSの原理
質量分析プロテオミクスが始まった当初は、比較に供するタンパク質群あるいはペプチド断片に13Cをはじめとする安定同位体原子を導入する方法が主流でした(標識法)。SILACやiTRAQはいずれも標識法です。非標識法は標識法に比べて数多くの利点を有しています。
・試料調製の手順が単純。
・微量試料にも適用しやすい。
・比較的安価で実施することができる。
・比較に供する試料の数に上限がないので、研究の目的と規模に合わせて最適の分析計画を立てることができる。
プロテオームデータの解析サポート
現在のプロテオミクスが取り扱う情報の量は、質量分析計や各種分離技術の発展に伴ってますます膨大になっています。メディカル・プロテオスコープでは、受託分析を通じてプロテオームの測定データを処理・解析するためのノウハウを蓄積しています。単なるタンパク質同定計量一覧の提供にとどまらず、適切な解析ソフトウェアを用いて重要な候補タンパク質の「見える化」をサポートします(図3)。
図3.LC-MS/MSデータの解析ワークフロー
タンパク質同定計量情報の可視化の例
一例としてMAプロット(図4左)とボルケーノプロット(図4右)を挙げます。いずれの散布図も
プロテオームデータ全体を概観するときに便利です。また、候補タンパク質を計量的に絞り込む際の表現方法としても有用です。
図4.データ可視化の一例: MAプロットとボルケーノプロット
非標識プロテオミクスを活かした分析例
次のような研究に最適です。
・培養細胞において、薬剤の曝露によるタンパク質発現の変動を調べる。
・ブルダウン精製物のタンパク質組成の違いを計量比較する。
・細胞から培養液に分泌・漏出されるタンパク質群を同定する。
・生産抗体の各種修飾や生産宿主由来の混入タンパク質群をロット毎に分析する(バイオ医薬品の品質管理)。
・リン酸化プロテオミクスをはじめとする各種翻訳後修飾の解析
分析の対象
・培養上清
・血漿/血清
・組織試料
・プルダウン試料
・バイオ医薬品(抗体)
など多数。
おもに使用する分析機器と解析ソフトウェア
質量分析計
Q ExactiveTM 四重極-Orbitrap質量分析計(サーモフィッシャーサイエンティフィック)
液体クロマトグラフ
UltiMate 3000 RSLCnanoシステム(サーモフィッシャーサイエンティフィック)
配列データベース検索
Mascot® Server ver. 2.8(マトリックスサイエンス)
LC-MS/MSデータの計量比較解析
Proteome DiscovererTM ver. 3.0(サーモフィッシャーサイエンティフィック)
おもな納品物
分析報告書: 試料調製からデータ解析までの各工程を詳述します。分析結果への簡単な考察も加えます。
・タンパク質とペプチド断片の各同定計量一覧 (.xlsx)
・分析報告書 (.pdf)
・分析結果の説明資料 (.pptx)
タンパク質/ペプチドの同定結果および計量値: 表計算ファイルにまとめたものを添付します。
分析結果を取得次第、オンライン会議などを通じて報告いたします。
分析の成功のために
・出発試料に含まれるタンパク質の量は、網羅的な分析の場合10 µgを基準にしています(バックアップを含む)。ただし、これより少ない量でも充分な結果が得られることが多いです。
・試料を準備される前にあらかじめご相談いただくと、質と量ともに満足いただける分析結果が得られる可能性が高くなります。
・多数検体の分析をご要望の場合は、試料調製装置を用いた試料前処理もお選びいただけます(多検体プロテオミクス)。
・分析の成否は試料の状態にも依存しますので、最初は少数試料を用いた事前検討をお勧めします。
・ペプチド混合物の分画やメートル長の分析カラムを組み合わせることにより、タンパク質の同定数をさらに増やすことができます(高深度プロテオミクス)。ご相談ください。
2024年5月14日更新
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